3.1 詐欺行為の手口
IT技術を利用した詐欺行為には様々なものがあり、常に新しい手口が生まれてきています。その中での代表的な事例として、以下について紹介します。
3.1.1 フィッシング
「フィッシング」とは、銀行やクレジットカード会社、オンラインショッピングサイトなどを騙った偽メールで本物のホームページそっくりの偽のホームページに誘導し、IDやパスワード、住所、氏名、銀行口座番号、クレジットカード番号などの個人情報を入力させて盗み出す詐欺の手口をいいます。そして、このような詐欺に使われる偽ホームページを「フィッシングサイト」と呼びます。
このようなフィッシング詐欺に遭わないための対策については、「3.2.1 フィッシング詐欺の対策」を参照ください。
3.1.2 クリック請求(後払い請求型アダルト「罠サイト」)
「クリック請求、罠サイト」とは、アダルトや出会い系関連のホームページ内の特定のボタンや画像、あるいは迷惑メール等に記載されているリンクのクリックを繰り返しただけで、有料サービスの登録がされたという画面が表示され、入会金や使用料等が請求される「後払い請求型アダルトサイト」のことをいいます。
以前は、1回クリックしただけで料金請求画面が表示されたことから「ワンクリック詐欺」とも呼ばれました。このように、1回クリックしただけで料金請求をされるのであれば、詐欺ということが容易に判断できました。
しかし、最近の「後払い請求型アダルトサイト」は関係法令に定められた表示、確認画面を用意するなど即座に違法とはいえないホームページ構成をとっているものが多く、「詐欺サイト」から、詐欺とは即座に判断できない「罠サイト」へ変貌しているといえます。
罠サイトは、接続元である利用者のIPアドレスや契約しているプロバイダ名などを表示することで、あたかも利用者個人が特定できるかのように見せかけ、利用者を精神的に動揺させる手口は、同じですが、最近では画面中央に料金を払うまで料金請求画面が出続けるというような手法をとる「罠サイト」も存在します。
このような後払い請求型アダルト「罠サイト」に遭わないための対処については、「3.2.2 クリック請求(後払い請求型アダルト「罠サイト」)の対策」を参照ください。
3.1.3 架空請求詐欺
「架空請求詐欺」とは、身に覚えのないホームページの利用料金などを一方的に請求する詐欺の手口いいます。契約が成立してないにもかかわらず、料金を請求するという点で「クリック請求、罠サイト」と本質的に同じであり、「クリック請求、罠サイト」は「架空請求詐欺」のひとつの類型です。この詐欺では料金の請求が電子メールやハガキで送られてくるケースが多いのですが、まれに電話で料金の請求が行われることもあります。
このような架空請求詐欺に遭わないための対策については、「3.2.3 架空請求詐欺の対策」を参照ください。
3.1.4 偽ウイルス対策ソフト詐欺(「偽ウイルス対策ソフト型」ウイルス)
「偽ウイルス対策ソフト詐欺」とは、実際にはウイルスに感染していないにもかかわらず「ウイルスに感染した」という嘘のメッセージを表示し、偽ウイルス対策ソフトを購入させようとする詐欺行為をいいます。この偽ウイルス対策ソフトは、単に偽物であるだけでなく一種のウイルスでもあり、インストールしたパソコンから個人情報などを盗み出すものもあります。また、購入の際に利用したクレジットカード番号は闇社会の中で販売されますので、新たな金銭被害に遭う可能性があります。
このような偽ウイルス対策ソフト詐欺に遭わないための対策については、「3.2.4 偽ウイルス対策ソフト詐欺(「偽ウイルス対策ソフト型」ウイルス被害)の対策」を参照ください。
なお、偽ウイルス対策ソフトによりウイルスに感染するきっかけは、大きく分けて以下の3種類があります。
- 1)不正なリンクを埋め込まれたホームページを閲覧しての感染
- 2)メールの添付ファイルの実行やリンクをクリックしたことによる感染
- 3)検索サイトにより「無料のウイルス対策ソフト」と称して偽ウイルス対策ソフトを配布しているホームページに誘引され、偽ウイルス対策ソフトを導入させられることによる感染
特に、1)のホームページからの感染は、症状の出る偽ウイルス対策ソフトだけではなく、症状のでないウイルスを同時に感染させようとしている場合が多いため、偽ウイルス対策ソフトだけを駆除して安心しないことが重要です。
これまでの偽ウイルス対策ソフトは英語表記のものが多かったのですが、最近では下記の例のように日本語に対応したものも出てきているため注意が必要です。
主な偽ウイルス対策ソフトとして以下のようなものがあります。しかし、これら以外にも次々に新しいものが作られているため注意が必要です。
名称 |
備考 |
Antivirus XP 2010 |
– |
Security Essentials 2010 |
Microsoft Security Essentialsに酷似 |
AVDefender 2011 |
– |
AntiMalware 2011 |
– |
DriveCleaner |
日本語版あり |
ErrorSafe |
日本語版あり |
SystemDoctor |
日本語版あり |
SpywareRemoval |
日本語版あり |
WinAntiVirus Pro |
日本語版あり |
WinAdBlocker |
– |
WinAntiSpyware |
– |
WinFirewall |
– |
WinFixer |
– |
WinContentFilter |
– |
VirusuWadame |
– |
KyoiKanshi |
– |
KansenNashi |
– |
MySearch |
– |
ErrProtector |
– |
MacSweeper |
マッキントッシュ用 |
3.1.5 その他、気をつけたい「甘い話、うまい話」
「安定した収入が得られる」「在宅で高収入が得られる」など、甘い話やうまい話には一般に裏があります。このような話をインターネットで見かけたら、裏に「悪徳商法」があるのではないかと疑ってかかり、くれぐれも騙されないように注意しなければなりません。
たとえば、誰でも簡単に高収入が得られると誘って高額な契約をさせる「ドロップシッピング*1」サービス事業者2社に、「特定商取引法第51条に規定する業務提供誘引販売取引に該当するものと認められる」として全国で初めて、東京都による業務停止命令(9か月)が出されました(2010年3月)。このケースの場合、次のような勧誘の特徴がありました。
- ●ホームページに「リスクゼロでネットショップを設立でき、月に数十万円を稼ぐことができるドロップシッピング」などと記載し、関心を持った消費者が連絡を取ると、事業者がネットショップのホームページ開設、広告の掲載、検索効果の向上対策、商品の発送等の業務を行うので、消費者は注文の受付、連絡、入金確認等の業務を1日1回15分程度行うだけでネットショップ運営ができる、事業者が行う集客作業が万全だから必ずお客が来て儲かるなどと説明し、高額なドロップシッピングサービス契約をさせる。
-
●「最低でも月に10万円から15万円の利益が出る」、「半年で元がとれる」など高額な収入があることが確実であると言って勧誘をするが、実際にはほとんど売上げがなく、儲からない。
出所:東京都報道発表資料
- *1:ドロップシッピングとは、ネットショップの運営方法の一形態。メーカーや卸売業者と契約することにより在庫を持たずにネットショップを開設し、顧客からの注文を受けるとその注文情報をメーカーや卸売業者に転送して商品を卸売業者等から直送させる。そして、商品の小売価格と卸価格(仕入価格)の差額分がネットショップオーナーの利益となる。
また、在宅ワークを希望している主婦などをターゲットに、データ入力等、仕事のあっせんをするとして商品を購入させたり、サービス料や登録料などを支払わせたりするが結局広告通りの収入が得られないという手口もあります。たとえば、データ入力の仕事をするためにパソコンとテキストを購入しなければならないとして何十万円かの費用を支払わされるが仕事はあっせんされない、あるいは仕事をあっせんしてもらうにはまず試験に合格しななければならないと言われ試験を受けるが、試験がむずかしく合格することができない、などといったケースがあります。
あるいは、「運用資金さえあれば自動で売買を行えるトレードシステム」とか、「在宅で簡単にかせげる競馬サイト」といったものもあります。これらは、確実に稼げる、あるいは利益を得ることができることが保証されているものではなく、また保証するとも言ってはいないのですが、「私も稼ぐことができるかも」と思えるような語り口になっている宣伝がなされていることが多く、うっかりすると不必要なお金を遣ってしまうことになりかねません。
このような気をつけたい「甘い話、うまい話」に騙されないための対策については、「3.2.5 その他、気をつけたい「甘い話、うまい話」の対策」を参照ください。